Pinkerton - Weezer [アルバム感想]
1996年。アメリカはロサンゼルスのオルタナティブ・バンドの2nd。
オルタナティブといっても退廃的な感じはなく、どちらかといえばエモに近いですけど。
本アルバムが実は個人的にWeezer初体験だったりします。
うーん。何でしょうこのアルバムの距離の近さは。生々しいというか、まったりとしているというか。
その辺のスタジオで演奏していて間近でそれを聴いているような臨場感は、スクールバンド的でもあり、近所の気のいいお兄さん的な親近感を覚えてしまいますね。
曲も基本的にはミドル・テンポ中心の、勢いよりもメロディ重視の楽曲が多いです。前半は割とアバンギャルドさすら感じさせる曲構成ですが、特に後半の曲は、メロディが語りかける説得力がハンパない。その感情にずけずけと干渉してくる憂いを含んだメロディは、あまりにも原理的で普遍的で、まるで童謡みたいともいえるかも。
個人的な感覚では、Cheap Trickとか、日本のSpitzとかに印象近いかな、と感じました。
心に染み入るというか、そんな感じの音だと思います。
ツボに入る人は、ホントツボなんだろうなぁ。
でもなぁ、ちょっと演奏が生々しすぎて、個人的にはもう少しきっちりかっちりやってくれたほうがいいのにな、と感じちゃうんですよね。まぁそういうところを求めるバンドではないんでしょうし、逆に魅力を殺してしまいそうな、そういう意見はむしろ無粋なんでしょうけどね。
Vicious Rumors - Vicious Rumors [アルバム感想]
1990年。アメリカの正統派パワーメタルバンドの3rd。
90年代前半で、Savatage、Annihilator、Pretty Maids、Metal Churchなどと共に、中堅どころとしてHMシーンを引っ張ったバンドの一つです。まぁHM全体では不遇の時代だったため、小粒感は否めないんですが。
上記に挙げた中でも、このVicious Rumorsは一番正統派といいますか、基本に忠実といいますか、正に典型的ともいうべきHMを実践しているバンドだと思います。それを体現したアルバムの一つが、バンド名を冠した本アルバムです。
もうどこを切り取ってもHM。ザクザクしたギター・リフは速い曲のときは疾走感を、遅い曲の時は重厚感を強調し、力強い、メロディアスとヘヴィネスを同居させたヴォーカル・ワークはHMカテゴリ以外の何者でもありません。#4なんて、Queensrycheにも聴こえたりして。そして#1や#7など、このバンドのスピード・チューンは独特のノリが正統派ならではのメロディ・センスと相まって、メロスピとはまた異なる魅力があるんですよね。
いい意味で、アメリカンHMの教科書的なアルバムだと思います。実際のところ結構バラエティに富んだ内容のアルバムなんですが、HMの基礎というか、あえてその範疇から外れずに曲を形作ってると感じるあたり、今では逆に希少価値や懐かしさすら感じるような、そんなアルバムですね。良盤です。
何か、個人的にはPrimal Fearとかと同じ空気を感じるバンドなんですよね。HM好きなんだろうな、こいつらっていう空気。そういうのが、結構いいなと思ったりするんですよね。
Beyond the Astral Skies - Uli Jon Roth [アルバム感想]
1985年。元Scorpionsの、ドイツが誇るギタリストのElectric Sun名義の3rd。
インギー様だって、マーティ・フリードマンだって影響を公言している、ギタリストとしても勿論、この人がいるから今のHR/HMがあると明言できる、最重要人物の一人ですね。HRとクラシックとの融合という面では、この人がはしりであり、それを形として具体化したのが、このElectric Sunというグループです。
まぁそれも当時の話であって、本アルバムを今改めて聴くと、やっぱり曲や音質の古臭さは否めません。でも、個人的には何の問題もありません。だって、スカイ・ギターの音色に限って言えば、当時にして既に完成されており、今聴いても全く古臭さや陳腐さを感じませんから。
いいですよねぇ。この抜けるような独特の音。まるで雲の上で奏でているような細やかな高音は、通常多くて24フレットのエレキギターが、このスカイ・ギターでは32フレットまで存在するために超高音領域での演奏が可能になっているとのこと。その代わり、あまり高音域過ぎて通常の半音毎のフレットではなく1音ずつで、半音はチョーキングで対応しているみたいな、そこまでやんなきゃだめなの的な奏法。
いやー今回改めて聴きなおしましたが、本当にギタープレイは古臭さを感じず、逆に普遍とも言うべきオリジナリティを強く感じましたね。まぁそれほどまでに、スカイ・ギターというのが独自の音を出す楽器である、というのと、それを感性に従って使いこなす、ウリ・ロートの奏法が大きいのですかね。
正直、アルバムの曲レベルとしては個人的に中の上から中の間。でも、このアルバムのギター・プレイは、Fair Warningなどでのギターソロが心に染み入る人なら、是非一度は聴いておくべき的な名演奏だと思います。
The Haunted Made Me Do It - The Haunted [アルバム感想]
2000年。スウェーデンはイエテボリの、デスラッシュ・バンドの2nd。
メロディック・デスのAt the Gates解散後、元メンバーが新しく立ち上げたバンドですね。
このアルバムが、一番At the Gatesからの流れを汲んでいると個人的には思います。スピーディかつ北欧ぽい哀愁を含んだメロディアスで印象に残る単音ギターリフ。曲の突進力は相変わらず抜群でありながら、メロディで聴かせるパートが多いアルバムですよね。ただし、確かにメロデスではない、どう聴いてもスラッシュ系列の音楽であるところが、The Hauntedというバンドなんですよね。
デスラッシュというと、疾走感とリフ・リズムワークが重要視され、メロディ面では画一的になりがちですが、このアルバムは各曲メロディ面においても聴き所があるという、ある意味北欧ならではのバラエティさが、その辺のデスラッシュのアルバムからレベルを一段引き上げていると思います。しかし切れのよい怒涛のリズム隊といい、天に向かってスクリーム!みたいな噛み付くようなヴォーカル・ワークといい、すごい演奏隊ですよ。これ。
The Crown無き今、デスラッシュバンドの代表格として、末永く付き合っていきたいバンドですし、このアルバムは当時その期待をかけるに十分な完成度でした。北欧デスラッシュとは何かといったら、このアルバムを薦めるでしょう。名盤です。頭がとまりません。
Timeless Departure - Skyfire [アルバム感想]
2001年。スウェーデンの、シンフォニック・デスメタル・バンドの1stです。
北欧には、こういう音楽をやりたい人っていうのは、やっぱり一杯いるんですかね。
初聴の印象は、Children of Bodomを、もう少しだけRoyal Huntにした、みたいな感じです。ヴァイキング・メタル風な臭みのあるメロディが、ちょっとだけAmorphis風味をも感じさせたりもして。まぁこういった説明に他のバンドを引用する手のものは、基本的に引用したバンドを聴いていれば良かったりするんですが。ね。
強調されたキーボード主体の音楽は、割と独自な立ち位置だとは思いますけど、まぁ曲自体としてどうかというと、もう少し頑張りましょう感みたいのをやっぱり感じます。曲は違うけど、受けるイメージはDark Tranquillityの1stに近い感じですね。あー次化けるかも、みたいな(実は化けなかったりするのですが)。キーボードを効果的に用いた曲の劇的さといいますか、展開の激しさは認めますが、曲としてもう少し特徴を持たせることはできなかったのかなぁと。何か聴いてて画一的というか、一緒にしか聴こえないんですよね。んー。
まぁ曲それぞれはそれなりに高揚感はあるし、キーボードの活躍がわりかし多めに感じますので、シンフォニック・メロディック・デス・メタルというジャンルが好きな人向け、ですね。あとは曲の作り方というか、構成はNortherとかWintersunとか、あのあたりに近いものがあるため、それ好きにもお薦めです。
しかしこういった曲を聴いてて思うんですが、やっぱり個人的に重要なのは耳を捕らえる主メロなんですよね。それがヴォーカルなのか、他の楽器なのかは置いておいて。こういうバンドを聞くたびに、そう再認識させられます。はい。
Technical Difficulties - Racer X [アルバム感想]
1999年。アメリカのポール・ギルバート率いる超絶テクバンドの3rd。再結成1st。
Mr.Big脱退後、以前のメンバーを集めて作成したアルバムです。
…ところで、個人的にはMr.Bigの再結成は、あまり望んでなかったんですけどね。まぁいいです。
さすがポール・ギルバートというべきか、楽曲のバラエティさは凄まじいばかり。この辺は面目躍如といったところでしょう。ブルース風あり、正統派HM風あり、超絶スピードのハイテク曲あり。Mr.Bigでやってたような曲まで入ってるあたり、節操がないというか何というか。
でも、この人の、楽曲としての主メロのセンスは、個人的にイマイチしっくりこなかったりするんですよ。極たまーにいい曲はあるんですけど、何というか、「あぁ、惜しい」という曲が結構多いんですよね。ギターソロは好きなんだけど。このアルバムも、やはり個人的には同じ印象。あと一押しって曲が多いです。
しかし、ポール個人の印象で言えば、Mr.Bigでやってたころよりは、とても音が生き生きしている感じがして、こちらの方が好感が持てますね。バンド全員が非常に楽しんで演奏している感じがして、アルバム全体を通じてとても明るい印象を受けます。
ポジティブなアルバムですよねぇ。メタルなのか本当にこれ。でもどう聴いてもメタル。リフがJudas Priestだったり、Iron Maidenだったり。これ以上ないメタルですからね。
というわけで、このアルバムはメタル好きなギターキッズのためのアルバムですね。ギターしか見るべきところのないアルバムという意味では決してありませんが、ギター弾きなら、このアルバムで高揚感を感じないわけにはいかないでしょ、という、そんな感じのアルバムです。あとは元気をもらいたい人。割と効くと思います。
The Warning - Queensryche [アルバム感想]
1984年。アメリカの正統派であり、プログレメタルの代表でもあるバンドの1st。
プログレ・メタルとして連想されるフォーマットの一つを形成したバンドです。近年はアルバムの出来もイマイチで、あまり話題にもなりませんけど、復活というか、胸のすくようなアルバムを個人的に心待ちにしているバンドの一つでもあります。ねぇ。何とかなりませんかねぇ。
このアルバムはまだ1stということもあり、曲にメリハリがないといえばないように感じますが、その独特の冷めたような質感はこの頃から健在で、ここから曲の構成やらメロディやらメリハリの質を高めて、バンド独自のシアトリカル・メタルとして昇華させたのが、以降のRage for Order→Operation::Mindcrimeであるわけで。
この頃のQueensrycheはそこにブレがないんですよねぇ。
Judas Priestに影響を受けていることは明確だし、King Diamondと同じような雰囲気を持つこともその通りなんですが、バンド名から曲のイメージが思い浮かぶ時点で、オリジナリティという面でその分野の頂点に位置したバンドと言えるでしょう。その原点はデビュー間もないことから既に確立していたという証明のアルバムですね。
はー。何とかなりませんかねぇ。今度の新作はどうなんですかねぇ。まだ聴いてませんけど。
タグ:HR/HM Queensrÿche
Perish - Perish [アルバム感想]
2008年。アメリカはオレンジカウンティのメタルコアバンドの1st。
オレンジカウンティってのは、何でこういう系統のバンドが多いんでしょうね。
土地柄なんでしょうか。そんなものでこんな音楽性が決まってるのでしょうか。
まぁフロリダのデスメタルや、ベイエリア・クランチなんかと同じなら、不思議はないか。
アメリカのメタルコア・バンドにおけるメロディ導入手法にはいくつかタイプがあって、
北欧デスメタルの影響で、叙情エッセンスをギターソロやリフに反映させたものや、
メロコアやハードコアなどのパンク畑から、演奏をメタル寄りにしたもの等ありますが、
このバンドはどちらかというと、メロディ要素をアメリカン・ロックから持ってきたような感じです。
まぁA7XやAtreyuなど、オレンジカウンティ界隈のバンドはみんなそんな感じですけどね。
でもここまでストレートに表現しているバンドは少ないんじゃないですかね。
メタルコアなりに、もちろんモッシュパートや突っ走りの部分はあるんですが、
ヴォーカルは大体が叫び声ではなく、声色をいろいろ変えつつきちんとメロディを歌っていて、
それこそまるで曲展開も含めてNickelback(カナダだけど)のように聴こえるときもあり、
フィリップ・アンセルモみたいな野太い声での歌唱もあり、まんまAtreyuのときもあり、
非常に曲としてバラエティに富みつつ、聴きやすくなってますね。
でもやっぱり根底にあるのはアメリカン・ハードロックなんですよ。これが面白い。
曲自体もノリとキャッチーさの適度なさじ加減が良く、面白いバンドだと思いますよ。
あまり日本では今のところバンド名を耳にしませんが、
Atreyuのようなアメリカらしいメロディを有するメタルコアが好きなら、
マストのアルバムと言ってもいいのではないでしょうか。
Black Clouds - Outrage [アルバム感想]
1988年。日本を代表するベテラン・メタル・バンドの1st。
実際に本バンドを初体験したのは4thのThe Final Dayなので、
本アルバムは完全に後追いでの試聴です。結構同じような人いるのでは?
一聴して分かるのは、演奏というか、曲自体のスケールの大きさ。
昔のスラッシュ・メタルにあった、曲の大仰さが感じられます。
まぁ確かに初期のMetallicaやMegadethに似ている部分もありますが、
普通に今ではパワーメタルとカテゴライズされそうな音だと思います。
よって個人的にはMetallicaやMegadethなどと比較するより、
結果としてなんですけど、その後のバンド展開としても
実はMetal Churchあたりに近かったような気がするんですけどどうですかね。
曲にもう少しだけ、ヒネリみたいなものがあればなぁと思うところまで一緒なんですが。
あとは、この頃のヴォーカルの垢抜けない日本的英語発音が、割と気になります。
別に英語自体にはぜんぜん問題ないのですが、やっぱり音楽としては、
発音の強弱とかエッジとかが、こういう系統の曲では特に、
曲のアタックの強さに影響しているんだなぁと思いましたね。
まぁでも実際、ジャパメタ系統ではない日本人らしからぬこの手のHMを、
海外一流レベルで演奏したという意味では、稀少な一枚だと思います。
結局理屈ではない”凄み”みたいなものが、特にスラッシュのような音楽には重要で、
それを備えた日本人バンドというのは、当時、いや今でもなかなかいないということです。
Wolves in Wolves' Clothing - NOFX [アルバム感想]
2006年。アメリカはカリフォルニアのベテラン・メロコアバンドの10th。
いやーBad Religionなんかもそうですが、パンクのバンドは、
いつまで経っても声が若いですね。もうそういう歌唱技術なのですかね。
個人的にイメージしているメロコアという奴を、
このアルバムに余すことなく詰め込んでくれたように感じます。力作ですね。
レゲエやスカ、カントリー風味も巻き込んだ貪欲なまでの音楽の拡散性、
でもその中に必ず存在するほんの少しの哀愁。
メロコアの醍醐味が、この一枚で味わえると言っても過言ではないのでは。
全く、アルバムがこんなしっかりしてるなら、ライブももうちょっと真面目にやってくださいよ。
逆にベテランであるからでしょうか。あまりメタル方向へのクロス・オーヴァーは感じません。
通常メタル方向からメロコアへのアプローチだと、
例えばA7Xとか、Municipal Wasteとかいったバンドですかね。
こういうバンドが肌に合わないならばあえてお薦めはしませんが、
逆にこういうバンドのメロディセンスが気に入るのであれば、
たぶんNOFXを初めとするメロ・コア系にも適応できるんだと思います。
そういった意味では、このアルバムを是非試して頂きたいです。
まぁ、言わばリトマス試験紙的なものに使えるかも、ですね。
しかし一曲一曲が潔いぐらい短いですねこれ。
しかも何か変な日本語入ってるし。何で女王様が怒ってるんでしょうか。
日本盤出さないくせになんでこんなの入ってるんでしょう。
メンバーの趣味なんでしょうか。日本はHENTAIの象徴なんでしょうかw。